先物取引と聞くと何となく以下のようなイメージを持たないだろうか。
私も上記のようなイメージを持っていた。
しかし,しっかり理解するとそこまで難しくなく,危険なイメージも払拭できるだろう。
今回は先物取引を理解するため要点をできるだけ簡潔にまとめた。
トウモロコシで理解する先物取引
いきなり日経225先物といった,実体のない先物取引を目にして理解しようとするから混乱するのだ。まずは,実体の存在する商品先物(今回はトウモロコシ)で理解を深めよう。
先物とは
先物とは一言で言うと「今の内に物の価格を固定しておくこと」である。
Aさんはポップコーン屋を経営しており,今年の夏に収穫されるトウモロコシを購入する必要がある。
しかし,夏になるまでトウモロコシの値段が分からないままだと経営の見通しが立たない。
そこで,今の内に収穫前のトウモロコシの値段を農家と相談して決めて,購入する予約をしようと言うのだ。
トウモロコシの出来が良かろうと悪かろうと決めた値段で収穫時期になったら受け渡すという契約だ。
限月とは
限月とは,代金とトウモロコシを交換する期限のことである。
トウモロコシが9月に収穫されるなら,限月は9月となる。
このトウモロコシは9月物のトウモロコシと言うことになる。
10月に収穫されるトウモロコシは10月物トウモロコシである。
証拠金とは
Aさんは1000万円分のトウモロコシを農家から購入したいそうだ。
しかし,農家にしてみれば今度の夏まで代金を受け取ることができない。
「Aさんは本当に代金を払ってくれるのであろうか」
と疑いたくなるのはよく分かる。
そこで,取引の担保として100万円だけ預けて欲しいと農家は言う。
この取引の担保である100万円が証拠金と言うことだ。
差金決済とは
Aさんは農家から9月物トウモロコシを購入する契約をしたのだが,お店が火事になりトウモロコシがいらなくなってしまった。
どうすればよいだろうか。
幸か不幸かトウモロコシは今年は不作のようで価格がみるみる高騰している。
Aさんは新しくポップコーン屋を始めるBさんに9月物のトウモロコシを転売すれば良いのだ。Bさんは1200万円でも9月物のトウモロコシが欲しいと言っている。
お金の動きはどのようになるだろうか。
9月になり農家とAさんがトウモロコシと1000万円を交換した後,AさんとBさんがトウモロコシと1200万円を交換するような面倒くさいことをするだろうか。
もっとも店が火事になったAさんは一時的にですら1000万円なんて用意できない。
そこで,9月にトウモロコシを農家から購入できる契約と1200万円と1000万円の差額である200万円をAさんとBさんで取引するれば良いではないか。
差額のみ清算するこれが差金決済だ。
日経225における先物取引
ここまで理解できれば,日経225先物と言った実体のない指数先物を容易に理解することができる。
日経225先物とは
日経225は指数であり当たり前だが実態があるわけではない。当然満期になって納品されるわけでもないし、何を納品するのだという話である。
日経225先物とは日経の動きを取引して損益が発生するように作られた金融商品である。
日経225先物が満期を迎えたら(=限月が到来したら)買った値段との差額を受け取る(or支払う)ことになる。
- 買った時より高い値段で満期を迎える=勝ち
- 買ったときより高い値段で転売=勝ち
- 買った時より低い値段で満期を迎える=負け
- 買ったときより低い値段で転売=負け
トウモロコシの時の例のように「日経225先物」と「実際に購入した金額」を交換するわけにもいかないので、日経225先物では差金決済ありきの取引が行われているのである。
差金決済と言うこともあり、新規で「売り」からエントリーすることもできる。
- 売った時より低い値段で満期を迎える=勝ち
- 売ったときより低い値段で転売=勝ち
- 売った時より高い値段で満期を迎える=負け
- 売ったときより高い値段で転売=負け
日経225における限月とは SQ日って??
日経225は当然ながら収穫もされないし限月を迎えたら日経225が終わるわけでもない。刻一刻と絶え間なく日経225は値動きを続けているのだ。
では日経225における限月とはどういうことなのであろうか。
- 日経225における限月は明確な区切りを人為的に決めただけ
お米などなら年に一回収穫できるとしたら,収穫月が限月になるイメージが付く。しかし日経225には区切りがないので、人為的に区切りをつけたというだけの話なのだ。
米農家が2期作にして収穫タイミングを増やすと儲かるように,日経225においても区切りを増やすと証券会社が儲かる。
日経225先物ミニでは毎月限月を迎える先物商品(1月物~12月物)が存在する。
ちなみに、何月物の日経225先物であろうと、その月の第2金曜日が最終決済日(=収穫日)となる。これをSQ日と呼ぶ。
- 第2金曜日の最終決済日=SQ日
3月、6月、9月、12月では日経225先物ミニと限月が被るので取引量も多くなる。これらの月はメジャーSQと呼ばれている。
日経225における証拠金とは
Aさんがトウモロコシの購入する契約をする際にトウモロコシ代1000万円を用意する必要はなく担保金としての100万円のみの用意で取引できたのを思い出してほしい。
日経225においても担保金(=証拠金)さえ用意していれば、取引を行うことができる。
つまり、口座に証拠金が入金された状態であれば日経225の取引ができるというわけだ。
それではいくら入金されていれば日経225先物の取引ができるのであろうか。
SPAN証拠金
その答えはシカゴ・マーカンタイル取引所(CME)が開発した「SPAN証拠金」という証拠金計算方法により証拠金額が決定される。世界中の先物取引所で「SPAN証拠金」を基準ににして証拠金必要金額が決められているのだ。
- 日経225先物は69万円あれば1枚購入することができる
日経225先物に必要な証拠金はおおよそ69万円だ。ただし「SPAN証拠金」は日経平均株価の値動きに合わせて毎週計算されるのでいつも69万円と言うわけではない。
あくまでこれくらいという参考価格だ。
69万円も用意できない方には日経225先物ミニと言う商品も用意されている。
ミニなら1/10の価格の6万9千円あれば1枚取引できる。
- 日経225先物ミニは6万9千円あれば1枚購入することができる
掛け目
前述の「SPAN証拠金」を基準に各証券会社ごとに証拠金が決定されている。”基準に”ということは証券会社によっては「SPAN証拠金」にアレンジを加えている可能性があるということだ。
自身が口座開設した証券会社によっては1.0~1.5の「SPAN証拠金」に掛け目が設定されている場合がある。
「うちでは「SPAN証拠金」の1.2倍の証拠金が必要だよ」
これで自身が口座開設する証券会社の証拠金必要額がばっちり分かる。
- 証拠金必要額=SPAN証拠金×掛け目
レバレッジ
先ほどから1枚1枚と言っているが、1枚とはどれくらいの量を買うことになるのであろうか。
日経225先物ラージとは通常より大きいわけではなくミニの反対語を取っているだけだ。
日経平均株価は2019年7月現在約21,600円程度だ。日経225先物ミニならそれを100口分買って1枚となる。
1枚買うというのは日経平均を約216万円分買うとイメージすればよいだろう。
日経平均が100円動くと100口持っていることにより1万円動くということになる。ラージは10万円だ。
- 日経225先物ミニが100円動くと1万円の損益
ちなみに先ほどの証拠金で説明した通り実際に購入する金額の216万円が必要になってくることはない。6万9千を担保として入金すれば、216万円分購入できるということだ。
つまり、持っている金額の約30倍のレバレッジをかけて取引できるということになる。
具体例を示すと、日経225先物ミニを1枚購入し買った金額より700円下がると7万円のマイナスになり口座が破産する。
投資と言うのは口座のリスク管理が非常に重要である。1枚購入するのにも最低限数十万円は入金しておきたいところだ。
値洗い
日経225先物の特徴として、保有しているポジションに対して、毎日15:45分頃に含み益、含み損を清算する「値洗い」が行われる。
値洗いとは、毎営業日の清算値で日々評価し、その評価損益を授受することである。
FXのように含み益、含み損のまま握り続けることができないのだ。
ポジション自体は持ち続けることはできるが、毎日清算されてしまうということだ。
呼値(ティック)
日経225先物はドル円などのFXのように銭単位で値動きがあるわけではない。日経225先物ラージは10円単位で、日経225先物ミニは5円単位で値動きが起きる。
この売買する際の価格の刻み幅を呼び値という。
日経225の取引時間(夜も取引可)
株取引をしたことのある人なら株は日中帯しか取引することができないことを知っているだろう。
サラリーマンにとっては、上記時間帯にしか取引できないことがネックとなり「諦めている人」や「24時間取引ができるFX」などに代替している人も多いのではないだろうか。
実は日経225先物は夜も取引できるのだ。平日日中帯働いている人たちにとっては非常に魅了的な選択肢であろう。
- 日中立会:8:45~15:10
- 夜間立会:16:15~5:25
上記時間帯いずれでも取引することができる。
日経225先物は配当や株主優待はない
残念ながら、日経225先物を購入しても「配当」や「株主優待」などの特典は一切つかない。完全に値動きだけの勝負と言うことになる。
まとめ
いかがだったであろうか。ここまで読んでくれたあなたなら先物取引がそこまで難しいものではないことを理解していただけたのではないだろうか。
また、非常に魅力的な金融商品であることも理解いただけたのではないだろうか。
ここまで理解したあなたなら、先物取引の概要をつかめたのではないだろうか。
最後にお勧めの入門書を紹介して終わろうと思う。
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世界一やさしいと謳っていることもあり、非常に平易な書きぶりなので1冊目として非常におすすめである。
以 上